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『ある日の録画2』の舞台裏。”嫌なヒーロー”誕生秘話

CGアーティスト・長谷川雄大が手がけた短編CG作品『ある日の録画2』。着想のきっかけは「モラルがなくて、なんか嫌なヒーロー」というユニークな発想からだった。独特な感性が生む、ちょっとありそうな世界線。

きっかけにフォーカスするメディア、CUE NOTE。第一回は、巨大ヒーローの嫌な一面を写した、ちょっとニヤッとしてしまうような作品、『ある日の録画2』の制作者、長谷川雄大さんから制作の裏側についてお聞きしました。

───作業はどのように進めていったのでしょうか?

総制作期間は2か月半で、プリビズ→デザイン→モデリング→シミュレーション→コンポジット→ナレーション録り→編集の順番で作りました。

───着想/企画はどのように生まれたのでしょうか?

‘ヒーローが実は悪’といった作品を観て、‘巨悪ではないけど、単純にモラルがなくてなんか嫌なヒーロー’がいたらどんな感じなんだろうと思ったのがきっかけです。

ちょうど当時通っていたデジタルハリウッドの課題で会社のオフィスを作ったタイミングだったので、ヒーローものの要素である『世を忍ぶ仮の姿』と掛け合わせ、 『ヒーローが出来心で”世を忍ぶ仮の職場”を戦闘のついでに壊す』という流れを思いつきました。

架空のテレビ番組はもともと好きなフォーマットだったので、この作品でもそれに倣っています。


───テレビフォーマットのお話に近いかもしれませんが、デザインで自分なりのらしさや癖が出るなと思う時意識してることってありますか?

癖とはまた違うかもしれないのですが、私はデザインを考えることが苦手で、自分でデザインを考えるとどうしてもダサくなってしまいます。

なのでデザインを考える必要がある際は、リファレンス画像を使って一度コラ画像を作るようにしています。

この作品のヒーローも、いろんなリファレンス画像を集め、Photoshopで画像を切り貼りしてコラ画像を作るところから作業を始めました。

最終的に映像としてのテンポが悪ければ、手間をかけた部分であっても切り捨てるようにしています。

自主制作であっても『映像やCGについて知識ゼロの人が見て楽しめる映像』を目指しています。

仕事では当たり前のことではあるのですが、自主制作ではつい勿体なくて必要以上に長く映したりしてしまいがちなので気を付けるようにしています。 そのためには制作に入る前に過不足のない計画立てをしないと作業が無駄になるばかりなのですが、まだまだ練習が足りません。

───自分の中で「ここに魂を込めた」と思えるシーンってありますか?

ヒーローがビルを壊す際の動きに感情が出るように目指しました。 壊す際の一瞬の気の迷いや、『いやイケる、バレてない』と思っているような動きを目指しています。


───「これは自分の原点かも」と思えるような映像体験などはありますか?

元々映画のメイキング映像を見るのが好きで、プラモデル作りも好きだったので、何かを作ることは好きだったと思うのですが、 CGに興味を持った一番最初のきっかけは『トロン:レガシー』の予告を観たときです。 衝撃的過ぎて、受験があるにも関わらず夏休みの間中ずーっとPSPに動画を入れて繰り返し見ていました。 「トロン:アレス」も楽しみです。


───ガジェットやデバイスに対する愛とか、こだわりがあれば是非聞かせてください

会社と家のキーボードの操作感をなるべく揃えるようにしています。会社と家で操作感が違うと私の場合結構ストレスに感じるので、そこはストレスなく作業できるようにしています。

エンジニア時代は会社のキーボードがタッチの軽いものだったので、家でも同じような機種を使っていました。 今はKASSENオフィスのキーボードと同じ機種を買って家で使っています。


インタビュー対象者

長谷川雄大

長谷川雄大

CGアーティスト

大学卒業後、約4年間エンジニアとして勤務。その後、映像制作を本格的に学ぶためデジタルハリウッドに1年間通い、CGやVFXのスキルを習得。現在はKASSENに所属し、CGアーティストとして活動中。

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記事執筆者

oshino

oshino

インタビュアー

普段はデザインをやっている。

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