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ミニオンズに憧れた少年が、映像をつくるようになった理由

ポップな動きと愛らしいキャラクターが魅力の、Kakuto Shimizuさんの映像。
学生時代のキャラクターをもとに描いた “Spaner & Nick -play time!-” は、短編ながらも高い完成度で話題に。
ドリームワークス作品に衝撃を受けたKakuto Shimizuさんを支える信念、制作の道のりを伺いました。

映画のようなワンシーンを自分の手で

───まず、この作品をつくろうと思ったきっかけを教えてください。

 学生の頃に作ったオリジナルキャラクターを使って、映画のワンシーンを作りたいと思ったのがきっかけです。

Kakuto Shimizuさんの学生時代の企画書

───『これをやりたい!』と火がついた瞬間はありましたか?

Pinterestを眺めていたとき、子供部屋で無邪気に遊ぶ画像が目に入ったんです。
主人公である “Spaner” が段ボールで仮装して子供部屋で遊んでいたら可愛いなと思い、そこから一気に火がつきました。

Spanerのコンセプトアート

───そのワンシーンから世界が広がっていったんですね。そのアイデアを形にしていく上で、どのようにブラッシュアップしていったのでしょうか。

 当時勤めていた会社の先輩や友人に、自分が今作りたいものを話して、アドバイスをもらいながらブラッシュアップしていきました。

───今回の映像、個人的に全て可愛くて大好きなんですが、特に「ここに魂を込めた」と思えるシーンはありますか?

短い尺なので、このワンシーンすべてに魂を込めました。
数秒間という短い時間の中でどれだけ演出を詰め込めるかを考え、カメラの動きや画角、最終画のドラマチックな雰囲気まで意識して作りました。

───この制作を通して、新しい発見や成長を感じたことはありましたか?

初めて毛の表現を使ったことで、一気にクオリティが上がったと思います。
また、フォトグラメトリーを初めて取り入れたことで、リアルなモデルをかなりスピーディーに扱えるようになりました。


原点にある映像体験

───次に、清水さん本人について伺わせてください。清水さんが「自分の原点かもしれない」と思う映像体験はありますか

 人生で初めて見た3DCG作品が、ドリームワークスの “森のリトル・ギャング” でした。
その作品を見て3DCGに興味を持ち、そこからさまざまな作品を観るようになりました。

───それを聞くと今の映像にも原点を感じますね。進路で、映像の道に進もうと思った決定的な作品や影響はありますか?

 “ミニオンズ”などのIllumination作品を見たときに、自分もこんな作品を作りたいと思い、この業界を目指すようになりました。

───1人で学ぶことも多いと思うのですが、学ぶ過程ではどんな人や作品を参考にしていましたか?

 “Tom studio”という、Blenderのチュートリアルを出している方をよく見ていました。
モフモフの毛が生えたリアル寄りのキャラクターをたくさん作っている方で、自分のキャラクター制作の際にもかなり参考にしました。

───キャラクターデザインで、自分らしさや癖が出ると感じる部分はありますか?

 動物系のキャラクターを作るとき、意識していなくてもミニオンのように手足が短く、骨格が円柱型のキャラクターになりやすいんです。
とにかく「可愛い!」と思ってもらえるようなキャラクター作りを意識しています。

───次は、清水さんの軸や信念についてお伺いしたいです。作品づくりの中で、譲れないポイントはどんなところですか?

 一つ一つの工程で一切手を抜かないことを意識しています。
以前は「あとで修正すればいいや」と思って進めていたのですが、結局そのまま完成にしてしまうことも多くて。
最近は、チーム制作のときに無理に作り込みすぎないよう、バランスを見ながら進めるようにしています。

───壁にぶつかったときは、どんなふうにモチベーションを取り戻していますか?

 制作のモチベーションが下がったときは、インプットを増やすようにしています。
好きな映像を見返したり、映画館に足を運んだりして、刺激をもらいます。

───オフの時間はどのように過ごしていますか?

一度ハマると抜け出せないタイプで(笑)。
以前はケバブにハマって、週3で買いに行ったり、ソースを買って自作したりしていました。

───すごいケバブ愛!(笑)その没入力がものづくりにも繋がっていそうですね。



これからの挑戦

───これから挑戦したい企画や構想中の作品はありますか?

 今までは数秒間のワンシーンばかりを作ってきたので、次は数分間のショートムービーを作りたいと思っています。

───それでは最後に、将来的に目指していることを教えてください。

 自分のチームを作りたいと思っています。
一つの映像に向かって、それぞれの得意分野を発揮しながら作ることが好きなんです。
最近は、自分の感性に共感して、一緒にものづくりができる仲間を探しています。

インタビュー対象者

Kakuto Shimizu

Kakuto Shimizu

CG Artist

専門卒業後、2年間映像会社に勤務。現在はKASSENに所属し、CGアーティストとして活動中。

X IG Youtube

記事執筆者

oshino

oshino

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